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「おいしい」は、誰が決めるのか。

4 日前
読了時間: 5分

レストランを探すとき、私たちはさまざまな評価を目にします。

星の数。世界ランキングの順位。点数。そして、評論家の言葉。

どれも優れた店を見つける手がかりですが、その評価は、同じ方法でつくられているわけではありません。調査員が店を訪ねる。食の専門家たちが投票する。各地の評価を集め、計算する。選び方が違えば、評価が示しているものも変わります。


以前取り上げたヌーベル・キュイジーヌでは、新しい料理をつくる料理人と、その価値を伝える評論家が、ともに料理の潮流を育てました。今回は、その「評価する側」に目を向けてみます。




ゴとミヨ――新しい価値を言葉にする

1972年、アンリ・ゴとクリスチャン・ミヨは、フランス全土を対象とする「ゴ・エ・ミヨ」ガイドを刊行しました。翌1973年には、ヌーベル・キュイジーヌの「10の戒律」を発表します。


加熱しすぎないこと。新鮮で質のよい素材を使うこと。重いソースを避けること。そして、創造的であること。

各地の料理人が進めていた試みから、新しい料理の考え方を見いだし、読者に伝えたのです。


ここで二人が示したのは、おすすめの店とともに、料理のどこを見るかという視点でした。

軽い仕上がりに、どんな技術があるのか。簡素な一皿に、どんな創意があるのか。

評論は、食べる人がそれまで気づかなかった仕事に、目を向ける手がかりになります。評価する言葉が生まれることで、新しい料理の価値を共有できるようになるのです。



ミシュラン――共通の基準で選ぶ

ゴ・エ・ミヨよりも長い歴史を持つのが、ミシュランガイドです。

1900年、タイヤ会社が自動車旅行に役立つ案内として創刊。1926年に料理への星評価を始め、その後、三段階の仕組みへと発展しました。


ミシュランが星の評価に用いるのは、素材の質、調理技術、味の調和、料理に表れた個性、そしてメニュー全体と訪問ごとの一貫性という五つの基準です。これらを世界共通で適用すると説明しています。


注目したいのは、「一貫性」が含まれていることです。

ある日にすばらしい一皿が出ることに加え、その店が、安定して優れた料理を提供できるかを見る。星は、訪れる客が期待できる料理の水準を示しています。異なる土地の料理を、共通の観点で評価する。その仕組みが、知らない街へ向かう人の手がかりになります。



50 Best――食べた経験を投票にする

「世界のベストレストラン50」は、投票によって順位を決めるランキングです。

投票を担うのは、シェフやレストラン経営者、食のジャーナリスト、食べ歩きの経験豊かな人々からなるアカデミー。彼らの食事経験をもとに、リストがつくられます。


ここでは、誰が、どの店を訪れ、どの体験を高く評価したのかが結果に関わります。

調査員が共通の基準で審査する方式と、経験した食事に票を投じる方式。同じレストランを扱っていても、評価を生み出す過程が違います。


ランキングを読む際には、投票者が訪れた店の範囲も考える必要があります。世界中の店をすべて食べ比べた結果というわけではありません。それでも、多くの食の専門家が、どの店で印象に残る体験をしたのかを知る手がかりになります。



ラ・リスト――評価を集めて評価する

さらに異なる方法を採るのが、フランス発の「ラ・リスト」です。

各国のレストランガイドや専門媒体、オンラインレビューなどを集約し、点数を算出してランキングをつくります。すでに存在する多くの評価を、共通の形に整理する仕組みです。


複数の情報源をまとめれば、一つの媒体だけでは見渡せない範囲を捉えられます。

ただし、集める情報源や、それぞれをどのように重く扱うかによって、結果は変わります。計算による評価にも、何を評価の材料として選ぶかという判断があるのです。調査員の判断、投票者の判断、集計方法を設計する人の判断。

数字の背後には、それぞれ異なる仕事があります。



黒真珠――中国の食べ手から評価する

2018年、中国の生活サービス企業、美団点評が創設したのが「黒真珠餐庁指南」です。

発足時から掲げたのは、中国の消費者の味の好みを踏まえ、中国の視点で優れたレストランを選ぶこと。初版から海外の都市も対象に含めていました。


料理の出来、サービスと環境、伝統の継承と革新。美団は、こうした柱を評価基準として示しています。

黒真珠の登場は、「誰が選ぶか」とともに、「誰に向けて選ぶか」という問いを浮かび上がらせます。世界共通の基準を掲げるガイドがある一方で、特定の食文化を出発点に、国内外の料理を見るガイドもある。


中国の食べ手の好みも一様ではありません。それでも、その視点を明示して評価の枠組みをつくったことに、黒真珠の特徴があります。食文化を発信する方法には、料理を届けることと、その価値を自分たちの言葉で評価することの両方があるのでしょう。




評価は、人と料理を動かす

五つの取り組みを並べると、「優れたレストランを選ぶ」という仕事にも、さまざまな方法があることがわかります。新しい価値を見つけ、言葉にする。共通の基準で、料理の水準を確かめる。食事の経験を、投票で持ち寄る。各地の評価を集め、順位を算出する。食文化の視点を明示して、店を選ぶ。


これらの役割は重なり合っていますが、星も順位も点数も、同じ意味ではありません。

そして評価は、発表されたところで終わりません。


読んだ人が、店を訪れる。その店の料理や技術に、関心が集まる。料理人に、次の仕事を続ける機会が生まれる。

評価が人を動かすとき、その物差しは、これからどんな料理が注目されるかにも関わってきます。


ゴとミヨは、新しい料理を評価する言葉を示しました。黒真珠は、中国の食べ手の視点から評価する枠組みをつくりました。料理が変わるように、料理を評価する側も変わっていきます。


「おいしい」は、誰が決めるのか。


その問いを考えるには、点数の先にある一皿だけでなく、点数がつくられる過程を見る必要があります。


美食の歴史には、料理をつくる歴史とともに、何を優れた料理と呼ぶかを問い続ける歴史もあるのです。

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